2013年1月30日水曜日

カレッジベースボールプレビュー:No 2,Vanderbilt

NO.2,Vanderbilt 

2012年成績 35-28(ランク外)、リージョナル進出
ヘッドコーチ:Tim Corbin

                    

2011年に学校史上初のカレッジワールドシリーズ出場を果たしたときのチームは素晴らしかった。Sonny Gray、Jack Armstrong、Grayson Garvin、Jason Esposito、Aaron Westlakeらを擁したあのチームは完成度が高く、今でも私のお気に入りだ。

だが、その年のドラフトでチームから12人が指名されるという記録を作ったため、当然戦力は大きく低下。2012年は開幕シリーズのスタンフォード戦で完膚なきまでに叩きのめされたのを始めに序盤は冴えない戦いぶりだった。しかし3月の終盤から波に乗り始め、4-5月は大きく勝ち越し。なんとか地区トーナメントを勝ち抜きリージョナルまで進出したものの、最終試合の8,9回に計6点を失って逆転負けし、スーパーリージョナルまで駒を進めることはできなかった。

そんなVanderbiltだが今年は2012年終盤に見せたポテンシャルに加え、有力な1年生選手を数多くリクルートしたことによって2位にランクされている。

ウィークエンドスターターの3人はT.J. Pecoraro(3年生)、Kevin Ziiomek(3年生)、Tyler Beede(2年生)という布陣。3つの球種を優れたコマンドで投げ分けるPecoraroは昨年トミー・ジョン手術を受けたものの、順調な回復力を見せ戦列に復帰することになる。ZiomekとBeedeはどちらも素晴らしい才能の持ち主で、彼らが期待通りに成長すれば投手陣は強力なものになるだろう。

ブルペンでは、右のサイドハンドからファンキーなフォームで沈む球を投じるBrian Miller(2年生)クローザーを務める予定。そこに全米で最高のリクルートに成功して獲得したWalker Buehler、Kyle Smith、Carson Fulmerといった才能あふれる1年生たちが加わることによってさらに厚みを増している。昨年からチームにいるPhilip Pfeifer(2年生)、Steven Rice(2年生)の両左腕も継投の際にいいオプションになるし、夏季リーグで大きな成長を見せた2年生右腕のAdam Ravenelleも控えている。

打線は左右のバランスがいい。Carl Yastrzemskiの孫Mike Yastrzemski(RF、4年生)、Tony Kemp(2B、3年生)、Spencer Navin(C、3年生らは)いずれも出塁マシーンだ。3年生の1B Conrad Gregorは爆発的なパワーを秘めている。ラインナップの中でスピードスターと言えるのはKempくらいだが、チーム全体がベースランニングスキルとインスティンクトを備えている。

ディフェンス面ではNavinは全米でもトプクラスの守備力を持ったキャッチャーだし、センターのConner Harrellも素晴らしい。2Bにコンバートされて2年目のKempは成長を見せている。ライトのYastrzemskiとライトのJack Lupo(4年生)も平均以上だ。

未だに未知数な部分もあるチームだが、タレントはそろっている。彼らが揃って実力を発揮すれば2年ぶりのオマハも夢ではない。

注目選手

Tyler Beede(RHP 2年生) 高校卒業時の2011年のドラフトでブルージェイズから指名されたが進学。速球、2つの変化球と3つのプラススタッフを持っており、そのポテンシャルを発揮すれば全米でベストクラスのスターターに成長するはず。

2013年1月29日火曜日

ブックレビュー:Out Of My League

                                                  Image found at dirkhayhurst.com


我々はDirk Hayhurstがベースボールとライティングという2つの才能を授かったことに感謝するべきかもしれない。彼はこの"Out Of My League"で、その2つを見事に融合させた。もしあなたが少しでもベースボールに興味があるなら、この本は絶対に読むべきだ。

内容は前作"The Bullpen Gospels"の続きで、2007年のオフから2008年のシーズンを振り返る内容なのだが、前作にはなかった要素がいくつか加わり少し違ったテイストの作品に仕上がっている。

まずなんといっても最大の違いはHayhurstに訪れた新たな出会いだろう。2007年のシーズン中にインターネットを通じて出会ったある女性の存在が彼に大きな変化をもたらす。それまでベースボールがすべてだったHayhurstの人生に、彼女が大きな影響を与えるようになる。AAAのオールスターゲームに選出されたのに、彼女と過ごすために出場を辞退するほどなのだから、その変化はただごとではない。

もちろん前作から引き継がれたコミカルな要素も十分にある。特に前半はその色が強い。スプリングトレーニングの初日に、クラブハウスでポルノビデオを販売していたチームメイトのエピソードなどはその典型だろう。他にも、アパートの隣の部屋に住んでいるゲイカップルの立てる物音が筒抜けで聞こえてくるシーンや、おなじみのブルペンでの会話などには笑いを誘われる。そうそう、HayhurstのTwitterハンドルにもなっている有名な架空生物 "Garfoose"の誕生シーンもある。

Hayhurstの家族が抱える問題も前作から変わらないものの一つだ。アル中の弟、ガールフレンドに罵詈雑言を浴びせる祖母、そして父親の健康状態...。しかし、Hayhurstがオープン戦の試合前にみたある光景に感動を覚え、父親の存在を再認識するシーンには私も心を動かされた。

物語の後半では6年間のマイナー生活を経て遂に長年の夢の地、メジャーリーグにたどり着くのだが、ここから雰囲気がガラッと変わる。初めて昇格したことによる戸惑い、不文律のルールやブルペンでも先輩たちの気に触れないように行動しなければならない、その他ルーキーの任務など、彼のメンタル面にいい影響を与えるとは思えないようなものであふれている。結果が伴わないのに、彼の周りの人間が彼をヒーロー扱いすることも彼を苦しめる。

もちろん、葛藤する中でも面白いシーンはある。ルーキーの仕事の一つ、ブルペンへのピンク色のバックパック(パドレスでは残念ながらピンクではないのだが)の運搬や、恒例の仮装移動(彼らは全員フーターズのウェイトレスの衣装を着た)などだ。

彼のフラストレーションは限界に達するのだが、最愛のガールフレンドと口論する中であることを悟る。そして、本を最後まで読めばある種の爽快感を覚えるはずだ。

メジャーリーグの壁にぶち当たり挫折するルーキーは多いが、その苦悩をここまで描写できるのはHayhurstしかいないだろう。そして、葛藤というのは誰もが経験することだ。誰もが日々の生活、仕事、人間関係で上手くいかないことがある。Hayhurstの職業はベースボールプレイヤーだが、彼の苦悩には様々な面で共感できる。

そして、私自身もマイナーとメジャーの往復する選手に対する見方がちょっと変わったかもしれない。みんなひとりの人間で、いろいろな人生があり、様々な問題を抱えているのだと。

最後に、作中のHayhurstのガールフレンドでクライマックスで彼の妻となる女性、Boonieの言葉を借りてこのレビューを締めくくろう。きっとこの本を読み終わった後は誰もがこう思うはずだ。

"I love you,Dirk Hayhurst"

Dirk Hayhurst Twitter:@TheGarfoose 

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カレッジベースボールプレビュー:No.1 North Carolina

 今年もカレッジベースボールのシーズン開幕まであと20日あまりとなった。ベースボールはカレッジスポーツとしてはアメリカ国内でもフットボール、バスケットボールに比べて注目度はかなり低い。ましてや日本からカバーするには並みではない努力を要求される。しかし、2月中旬の開幕から6月にオマハで行われるカレッジワールドシリーズまでを追っていると、そこにはまたMLBとは少し違った面白さがある。昨年のStony Brookのようなストーリーにも心を動かされるはずだ。また、ドラフトの予習としてもこれ以上最適なものはないだろう。

このシリーズではカレッジベースボールのシーズンの予習として、Baseball America誌のプレシーズンランキングをもとに各学校の戦力、注目選手などを紹介していこう。

No.1 North Carolina 

2012年成績:46勝16敗(全米17位)、リージョナル進出
ヘッドコーチ:Mike Fox

          

堂々の1位に選ばれたのはTar Heels。投手陣はスターター、ブルペンともに実力とデプスを兼ね備えている。昨年揃って防御率1点台を記録したKent Emanuel(3年生)、Benton Moss(2年生)、Hobbs Johnson(2年生)のウィークエンドスターター3人がチームに残っているのは大きい。全米でもベストクラスのローテーションだ。

ブルペンからはオール・アメリカチームに選ばれたクローザーのMichael Morinと左腕のR.C. Orlanが抜けたが、それでも層の厚さは全米一を保っている。新クローザーと目されるMason McCullough(2年生)をはじめとして実力者がそろっている。

オフェンスは平均より上といったところか。ただ、昨年は手首の怪我の影響でシーズンの半分を棒に振ったColin Moranが健康に過ごせれば大きな脅威となる。打線における左右のバランスもいい。パワーは目立ったものではないが、昨年チームトップとなる5HRを放ったCody Stubbsは多大なパワーを秘めており、開花する可能性もある。

ディフェンスもキャッチャー、ショートというセンターラインの2人が入れ替わるが、新正捕手のMatt Roberts(3年生)は強肩とインサイドワークの持ち主。1年生ショート、Landon Lassiterもグラブさばきとインスティンクトを兼ね備えている。外野の3人も守備範囲は広い。

昨年はリージョナルで惜敗を喫したが、経験と実力の備わった2013年のTar Heelsは間違いなくオマハへの有力候補だ。

注目選手:

Colin Moran 3B:2012年は怪我でシーズンの半分を欠場したが.365/.434/.494と素晴らし数字を残した。今年のドラフトクラスでは最高級のピュアヒッターと言われている。

Mason McCullough RHP:速球は92-96、最速98マイルに達する。スライダーも抜群に切れ、メンタル面もクローザーを務めるには十分なタフさがある。

Skye Bolt RF:「空を走る稲妻」という凄まじい名前の通り、電撃のような身体能力をもつ1年生のスイッチヒッター。昨年のドラフトでは注目選手の一人で、ナショナルズから26巡目で指名されたが進学した。